S線上のアミ様 #001

 

S線のいつものホーム。

通勤電車が入ってくる。今朝は遅延はないみたいだ。

 

ホームドアが開き、皆がズイズイと小さく前に押し寄せる。ちんたらした前のおっさんと、目の色変えて席に座り込むおばはんのせいで、前の方に並んでいたのに座れなかった。

 

まぁツイテないなんて思うほどのことでもないか・・。

それぞれ老いも若きも、死んだ魚の眼をした人間を大量に乗せた鉄のコンテナは、今朝も地獄へ向かって走り出すのだ。

それにしても後ろの高校球児のバッグがデカくて邪魔すぎる。

 

「よし!」

前方をピッと指さして、車掌をしている友人Tの声が聞こえる。

いつ以来だろうか、やってるな。

話には聞いていたが、前にたまたま通勤で乗る電車で車掌姿を見た。

あんないい加減なやつが車掌なんてと最初は思ったが、小学生からの友人が制服を着て張り切る姿がちょっぴり誇らしく、なんやかんやちょっぴり羨ましい。子供の頃の夢ってやつを叶えたんだろうか。

まぁ人は人、比べたところでしょーもない。なんか色々大変だろうし。

 

俺はいつも決まった電車に乗って、今日も我慢だけの職場へ行くだけさ。

 


 

だるい。だるすぎる。

 

もう帰りたい。

自由がほしい。家畜だ、俺は家畜なんだ。

28歳という人生で貴重なこの時間を、こんなことに使って良いのだろうか!

 

つり革に両手でしがみつきながら、そんなことばかりが頭をめぐる。

 

「かなしいのぉ」

 

なんか聞こえた。

残業疲れで重い頭をゆっくり上げて、声の出元を細目で見上げる。

 

「まったくかなしいのぅ」

 

アミ棚の上にそいつはひょっこりと座っていた。

 

フンフンフン〜♪

 

そいつは足をぱたぱたさせながら鼻歌を歌っていたが、

パッとこちらに振り返り、ばっちり目があってしまった。

「おぬし、ワシが見えるのか?」

 

アミ棚の上に、2頭身くらいの、それも昔の貴族風衣装に身を包んだ、なんかちっちゃいやつがいる。

こっちを見て何か言っている。

 

………なんだこいつぅぅ!?

 

仕事の疲れか、はたまた漫画の読み過ぎか。

満員電車の中だったので、目を見開きつつ声は出さないようにグッとこらえた。

 

「こいつとはなんじゃ、失礼な。」

 

…思いっきり聞こえてしまったらしい。いや、声は出していないはず。

推定40センチ程度、子供にしては小さすぎるし、俺は幻覚でも見ているのか。

 
「幻覚ではない。」

 

なんか聞こえてるし!

俺しゃべってないし!

 

「口に出さずともわかる。なにせワシはアミ様じゃからな。

おまえの心の中なんぞスッケスケじゃ。」

 

それが俺とアミ様との出会いだった。